Chikanism

現実と非現実のあいだ

この瞬間が永遠に続くか、そうでなければ人生が終わってしまえばいい

いまこの瞬間に死んでしまいたい、そう思ったことがある。大好きなバンドのライブの最中、一番好きな曲のイントロが流れてきた瞬間。

狭いライブハウスの真ん中前寄り、前の曲が終わって一瞬世界が暗くなる。赤や緑の照明がチラついて、興奮でファンが前に押し寄せた。噎せ返るような熱気と、ちょっと籠もった汗の匂い。

その真ん中で、ギターのイントロを聞きながら、間違いなくわたしは、この瞬間が永遠に続くか、そうでなければ人生が終わってしまえばいいと願っていた。

 

何度ライブに足を運んでも同じ現象が起きた。毎日同じことの繰り返しのつまらない高校生活の中で、ライブは単に癒やしとかではなく生きがいだった。会場は戦場でもあった。(ライブに行かなくなった今の生きがいってなんだろ、仕事かなあ)

他のバンギャル友達に聞いたことはないのでこう思っていたのがわたしだけなのかどうかわからないけど、少なくともわたしは毎回そう思っていた。

でも時間が止まるわけはなくて、終わらないで欲しいと思えば思うほどあっさり過ぎていくような気がした。

 

 

不思議なことに、バンギャルを卒業してK-POPアイドルにハマったときは、これほどではなく、時間が止まって欲しいと思うことはあっても死にたいと思うことはなかった。あれはのライブハウスの、妙な密室の中だったからかもしれない。メンバーにも近かったしファンとの一体感も生身で感じられて、あのときの興奮は確かに、アイドルのコンサートでは感じられない。

今となってはK-POPアイドルのファンも卒業してしまったが、まぁ人生においてあそこまでの興奮を感じることはほとんどない。仕事でドキドキすることやワクワクすること、いわゆる興奮することはあるものの、それはあのときのそれとはまた別のものだ。どちらかと言えば未来への興奮なので、今死ぬわけにはいかないという感覚に近い。

 

なんだったんだろう、あのときの感覚。もう二度と味わうことはないかもしれない。