Chikanism

現実と非現実のあいだ

誕生日のこと

数日前に30歳になった。

当日は都民割で彼とホテルを予約していて、3日間たっぷり遊んだ。

 

でも、1日目の夜に事件が起きた。

旅行に行っていたらしい父から写真が送られれきたので、私は、もうすぐ誕生日だよ、30歳になるよというようなことを返信した。

私にとっては、30歳というのはただの事実で、むしろ30年も生きたんだなぁというどちらかというとポジティブな意味を持たせて言った。

 

その後に父から送られてきたのは、「おわってるな」「もうすぐおばさんやで」というメッセージだった。

30年生きたことを、当然父も喜んでくれると思っていた。

節目の年だから、いつもより盛大にお祝いされてもいいくらいだと思っていたのだ。

 

理解ができなくて、しばらく戸惑ったけど、その後は悲しさで涙が溢れてきた。

ホテルの部屋で、ソファに座っているときだった。彼にバレないようにこっそり涙を拭い、「よくそんなことが娘に言えるね。信じられない」と返して、私は止まらない涙を隠すためトイレに向かった。

トイレで鼻をすすってると、彼が慌てて寄ってきて「ねえ、泣いてる?」と声をかけてくれた。せっかくの旅行なのに、私が個人的なことで泣いて雰囲気を悪くするのも避けたいし、理由をうまく説明できる気もせず、「泣いてないよ」と私は答えた。

ちょうど花粉がひどくてくしゃみと鼻水がとまらなかったので、「花粉なの?」と彼は納得し、戻っていった。私はわざとらしく鼻をかみ、平然とした顔で部屋に戻った。

 

それから大浴場に行って一人になったら、また泣けた。

そして、せっかく楽しい時間を過ごしに来てるのに、最悪な気分でいることが悔しくて、さらに腹が立った。父の言動も、気持ちを切り替えられない自分も。

せっかくの素敵な夜景も、モヤモヤした気持ちで見た。

 

お風呂に入ると少し落ち着いたが、夜はなかなか寝られなかった。

翌朝、腫れた目をごまかすために慌てて朝風呂に行った。

 

 

翌日の夜になる頃には、涙は出なくなっていたが、結局完全には気持ちを切り替えることができず、なんだかネガティブな気分を捨てきれない3日間だった。

誕生日当日には、父からも何度かメッセージが入っていた。旅行の写真や、誕生日を祝う言葉など。あの夜から無視していたので、一言だけ返事をした。

 

別に悪気はなかったんだと思う。でも、悪気のない一言でも私は傷ついたし、大事な休日を100%楽しめなかった。

昔からうまく喧嘩ができず、無視するくらいしかできなかった。もっと怒ればよかった。傷ついたって、しっかり言えればよかった。でも言えなかった。

 

ここ数年感じていることだけど、怒れないというのは本当に良くない。

嫌なことをイヤだと言えないことで、自分がどんどん軽んじられていく。悪意がなくても、傷つくようなことを平気で言うひとはいる。

社会人になってからはそういう人とは距離を置くようになったけど、それが身近な人で、これからも関係を続けたいなら、嫌なことは伝えて、関係性をより良く続けるための努力をしなくちゃいけない。

 

そういう意味でも、30歳は強く、楽しく生きたいと思った。