Chikanism

現実と非現実のあいだ

違和感

違和感を大事にしたほうがいいよ、と言ってくれたのは就活をしていたときになぜか面談をしてくれた有名企業の、特に縁もないはずの親切な男性だった。スカイプ越しに話して、こういう企業はどうかなどと、本当に親切に色々教えてくれた。

 

ふとその言葉が頭をよぎったのだった。違和感を大事にしたほうがいいよ、と。

 

 

違和感(いわかん)とは、生理的、心理的にしっくりこない感覚。 周囲の雰囲気にそぐわず、食い違っている印象を受けること。 また、普段と様子が違うこと。 不自然なさま。

 

しっくりこないこと、かぁ。そんなに違和感ないこと、しっくりくることってあるかなぁ、と思ってみる。例えば人間関係では、しっくりこないことがある。あれ、そうなの?そういうこと言うの?私のことどうでもいいと思ってる?

 

仲良しのはずの子と約束しても、何かとドタキャンされる。友達だと思っていた男性に、恋愛の好意を伝えられる。 慕っていた元上司が見下すような発言をする。

行けない旨のLINEを受け取った前日の夕方、夜の街の信号の前で振り切った手、居酒屋の横並びの席で何も言わずに飲み込んだレモンサワー。

 

違和感がないことなんて、ないよ。それでもいいかって、受け流せるようなことばっかりじゃない。

 

 

 

 

きっと些細なことなんだと思う。でも、親切な彼が私に言った「違和感」という言葉が頭から離れなかった。あの瞬間、急に冷静になって違和感について考えていた。

部屋でお笑い番組を見て、私の隣で笑ったりウトウトしたりしていた人。まっすぐ顔が見られなかった。こっちを向かないで、どこかで思った。そうかもしれない、違うかもしれない。決定的な何かはない。

 

果汁35%のチューハイを飲んで、思い返す。違和感なかったこと、例えば今の会社への転職はそうだった。予想外のきっかけで決めたことだけど、迷いはなかった。しっくりこないと思ったことはなかった。

何より、「違和感を大事にしなさい」という彼のセリフが浮かんでくることはなかった。

 

 

違和感がないっていうのがそういうことなら、じゃあやっぱり違和感があるっていうのはこういうことかもしれない。顔も覚えていない誰かのセリフが強烈にこびりつく。

一人になった部屋で、何回考えてみても明確な答えは出せなくて、雨の音だけが聞こえた。