Chikanism

現実と非現実のあいだ

ゴールは来ない

社内にはまだ8割くらいのひとが残っている夜18時半過ぎ。お客様から電話がかかってきた。「ちかさんまだ会社にいますか?よかった~~!○○の件なんですけど…」

わたしが会社にいるとわかると、すごく安堵したような声を出す相手。まだ1回しか会ったことはないお客様だけど、最近急に案件をくれた。

「お世話になってます~!はい!あぁほんとありがとうございます、はーい、じゃあメールお待ちしてますね!よろしくお願いします~!」

普段より3トーンくらい高い声で話す。無意識だ。

 

商談の確認のために先輩にも電話した。このまま進めても大丈夫かどうかの確認だ。美味しい話だけど、うまくいかせる自信がなかった。先輩は「大丈夫!受注したらインセンティブ狙えるよ」と言ってくれて、社内の別の人にも施策について相談して、進めることにした。

受注できたのが嬉しくて、「案件もらいましたよ~」と言うと、営業部の先輩たちみんなが「おめでとう!」と言ってくれた。

 

わたしのチームはわたしを入れて4人しかいない。課長は時短勤務をしていて夕方には帰宅していて、他の先輩ふたりもほぼ毎日外出があって、夕方はわたし一人になることも多かった。

それでももちろん質問したら答えてくれたし、助けてもらった。そしてチームのひとがいないときは他のチームの人がいつも助けてくれた。

そうやって色んな人にサポートしてもらって、やっと自分でアポから掴んだ受注。これはゴールじゃないけど、やっぱり嬉しくて、帰るのは遅くなったけど歩く足取りは軽かった。

 

疲れたのでスーパーでお惣菜とモンブランを買って、家まで歩きながらなんとなく母に電話した。普段電話なんてしないので(たぶん3ヶ月ぶりくらい)、母は驚いたのかワンコールで電話に出た。「どうしたん?」

心配するような声が聞こえた。「別に、なにもないよ。急に電話したからなんかあったかと思った?」と聞くと「うん」と言う。本当になんとなくだったのだけど。

今度実家に帰るときの新幹線の話や妹の誕生日の話をして、家についたので電話を切った。21時。

 

話しながら、やっぱりお客様に話すときみたいな声は出せないな、と思った。あれはいわゆるオン状態だ。オフでは出せない。

そんなに意識してオンオフはつけていないし、職場でもそんなにかしこまった敬語を使っていない(むしろゴリゴリの関西弁で喋っている)タイプだけど、やっぱりどこかしら切り替えている部分があるんだなと初めて自分で気づいた。

 

パソコンの画面を見ながら電話越しにお客様に説明して、電話なのに手振り身振りをつけている自分に気づいて一人で恥ずかしくなったけど、まぁそれなりにやれてるし。

先週、先々週に行動した分がこうやって形になったのが嬉しかったし、まだまだこれから頑張ろうと思えた。ゴールなんて永遠に来ない。