Chikanism

現実と非現実のあいだ

続いて欲しい時間

このまま時間が止まればいい、そうでなければ今この瞬間に死にたい。確かに私は、そう思っていた。
10年くらい前、お小遣いをためて通っていた大好きなバンドのライブ会場で。一番好きな曲のイントロが流れたあの瞬間。肌がゾワゾワした。時間が止まらないことも知ってた。そう思いながら、「でも最後までのこの曲を聴きたいよな」とも思っていた。

 

でも最近、幸せな時間は「止めてしまいたい」ものじゃなくて「続いて欲しい」ものなんだと思った。この瞬間で止めたいんじゃない、このままずっと続けばいい。

そして、その最中には、「今が幸せだから、この時間がずっと続けばいいな」なんて考える暇がない。その一瞬一瞬に必死だから。

後になって、気づくんだと思う。

 

 

じゃあ止めてしまいたかったあの瞬間は一体なんだったのか。

今でも鮮明に思い出せる。京都の狭いライブハウスで、照明が落ちて、緑や紫のスポットライトが揺れる。ギターのイントロが鳴る。ボーカルが吹くハーモニカが響く。

観客の声が上がる、私の心臓が跳ねる、疲れた身体のはずが一気に活力が漲る。

酷く待ち望んだあの瞬間。あれは逃避だったのだろうか。

一音も逃さず聴いていたい、その音を感じていたい、会場と一体になりたい。自然と身体は動くのに、どこか冷静に終わりの瞬間を考えていた。終わりが来ることがわかっていたからなのか、その終わりが数時間という近距離で迫っているからなのか。

 

 

わからないけど、なんとなく、生き急いでいたあの頃よりものんびりと平和な日常を愛せるようになったような気がする。