Chikanism

現実と非現実のあいだ

夏の日のホットチョコレート

ちょうど1年前の今日。泣きたいような気持ちで東京の街を歩いていた。夏の暑い日だった。

歩くだけで汗が噴き出して、頬が濡れている気がしたけど、それが汗なのか涙なのかもよくわからなかった。

 

バカだなあ、と心の中でつぶやく。それは本当に呆れているからでもあり、そうやって独り言のように繰り返すことで自分の気持ちを誤魔化したいからでもあった。

7月になっても終わらない就職活動での面接を終えて、訪問した会社のビルから出てきたばかりだった。ウェブマーケティングだかなんだかをしている会社で、説明されてもわかったようなわからないような事業内容だった。もともと逆求人系のサイトでオファーをもらって受けた会社だったけど、面接官は営業の厳しさについて語り続け、「君は覚悟が足りない。働く気ないでしょ?」と言った。

働きたいから就活をしてるんだ。言えなかった言葉を頭の中で反芻する。悔しいけれど、こういう熱意が伝わらないところは今も直っていない。

 

暑さと不甲斐なさにうんざりして、どこかで涼もうと思って歩いた。青山のあたり。見慣れない街で、見慣れた看板を見つけた。

それはバンクーバーでよく行ったBLENZ COFFEEの看板だった。バンクーバーでもインタビューがうまく行かなくて、よく泣いてた。カフェでホットチョコレートを頼んで、話す相手もいなくて、一人でパソコンを見つめていた。

また同じような気持ちで出会ってしまったなあ、と思いながら、青山のBLENZ COFFEEの扉を開く。メニューがまったく一緒かどうか、そんなことまでは覚えてなかったけど、マグカップにメープルの葉が描かれていたのでやっぱりバンクーバーを思い出した。

暑いのにホットチョコレートを頼んだ。バンクーバーでは冬だったので、わたしはホットチョコレートばかり飲んでいた。仲良いひとがよくクリームをくれていた。

 

 

東京に住みはじめて、一度だけBLENZ COFFEEに行った。そのときはホットチョコレートじゃなくて、冷たいドリンクを頼んだ。何もかもがうまくいくわけなんてなくて、泣きたくなるような辛い日も、悲しい日も、きっとくる。

でもまたちゃんと頑張れるかな、と思った。なんだかんだでここまでこれたし。

泣きたくなったらまた来よう。そしてそのときはまたホットチョコレートを頼むんだ。