Chikanism

現実と非現実のあいだ

玉ねぎを炒めていたら涙が出てきた

玉ねぎを切り終えたら涙が出てきた。硫化アリルの仕業だ。今調べた。

 

なぜか切っている最中は涙は出ないのだ。玉ねぎを切り終えて、にんにくとベーコンに包丁を入れたら涙が溢れた。にんにくを鍋にいれ、玉ねぎを加える。鍋を混ぜながら、わたしは泣き続けた。どこかで「彼女と別れ話をしたときは泣かなかったが、スマホに残った写真を消していたら泣けた」という話があったのを思い出した。玉ねぎを切ったときは泣かなかったが、鍋で炒めていたら泣けた。ちょっと似ている。

 

ベーコンを加えて炒め続けながら、ある人と親子丼やカレーを作ったときのことを思い出した。その人はわたしがちょうど玉ねぎを切ろうとしたタイミングでスマホを持って、「ちょっと電話してきていい?」と言った。もちろん構わないのだが、その人は「玉ねぎで泣いちゃうからってわけじゃないよ」と言い訳めいたことを言ったので、わたしは笑った。カレーを作っているときその人は必死で扱いにくい外国製のピーラーを使ってジャガイモの皮を向いていたのだが、このときもわたしは牛肉と玉ねぎを炒めながら泣いていた。「ジャガイモの芽の毒ってなんだっけ」と言うので、「ソラニンね。これわたしの専門だから」と答えた。衛生学で勉強した。もう忘れたけれど。どんな症状が出るのか覚えてなかったので、「専門とか言わないほうがいいんじゃない」と言われて笑った。ソラニンって漫画もあるし、語感が爽やかだけれど、実際は食中毒で死亡する例もある。

 

その後わたしはひとりでカレーを2回作った。そのときも玉ねぎを切り終えてから涙が止まらなくなった。クリームシチューも作ったし、ポトフも作ったし、チーズリゾットも作った。玉ねぎを切り終えては泣く。そのたびに「玉ねぎで泣いちゃうから外に電話しに行くわけじゃないよ」というセリフを思い出す。

今日は野菜スープを作った。少しバジルを加えようと思ったら手が滑って入れすぎたけれど、味はそんなに悪くない。

硫化アリルのせいで、まだ目がしょぼしょぼする。昨日の夜に飲んだ、よく眠れるようにするハーブティーのせいかもしれない(余っていたから)。なんせ9時間寝ても眠かった。決して、思い出して泣いていたわけじゃないよ。