Chikanism

現実と非現実のあいだ

歳をとると世界が広がる

「いま何してるの?」と聞いたら、「音楽聴いてる」と言われた(※1)。どんな音楽を好むんだろう、と思った。彼が教えてくれたのは「ダフト・パンク」だった。曲はおろか、グループの名前すら聴いたことがなかった。

すぐに調べて聴いてみたけれど、そのときに聴いたのがどの曲だったのかはもう覚えていない。その後しばらくして「ダフト・パンク」の名前も忘れた頃に研究室の教授がぽろりと「ダフト・パンクとか聴くことがある」と言っていて、わたしは彼女のことが嫌いだったので辟易した。

 

最近になって、というかカナダに来てから洋楽を聴くようになったのだが、一時期ずっとトップチャートにランクインしていたザ・ウィークエンドのStarboyがダフト・パンクとフィーチャリングしたものだった。それでまたふとダフト・パンクを思い出した。

それでGet Luckyを聴くようになった。ハウスミュージックというジャンルも好きだなぁと思う。昔は好まなかったジャンルだ。若い頃はゴリゴリのバンドサウンドが好きで、ライブハウスでよく頭を振ったり駆け回ったりしたものだった。人はこれをヘドバンやモッシュと呼ぶ(※2)。

いつの頃からか好きだったバンドがエレクトロニカのサウンドを取り込み始めたころに、「あぁわたしは意外とこういう音楽も好きなんだな」という発見をした。

時は流れて大学生になってK-POPにハマったときにも、ヒップホップ系やクラブミュージックを好む自分にまた気がついた。K-POPにハマる日がくるとは思ってなかった(※3)。

年齢を重ねて守備範囲が広がっていくのは、年をとると昔嫌いだった食べ物を食べられるようになるのに似ている、と思った。一説によると味覚が衰えていくかららしい。

 

そんなわけでわたしにとって少し特別な響きを持つダフト・パンクというアーティストの曲を今日も聴く。昔嫌いだったセロリを今は好んで食べる。昔聴かなかったジャンルの音楽を聴く。歳をとることは、世界が広がることなんだなぁとぼんやり思う。現に今は、違う国に住んでいるし。

 

(※1)普段からこういう面倒くさい感じの連絡ばかりしているわけではない

(※2)年齢とパッションの関係でわたしはもうそれらが出来ない

(※3)彼らが日本デビューして一躍話題になった頃は、「大爆発ってw」などと心のなかで思っていた