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女子大生ちかの徒然

女子大生の脳内お花畑系なブログfromバンクーバー。日々感じること考えることを大事にしたい感じ。

見知らぬおじいさんのせいで下着を買い損ねた話

どうでもいい話

それは遡ること約1ヶ月、ブラックフライデーの午後であった。わたしはブラックフライデーの恩恵に預かるべくダウンタウンを歩いていた。その中でもわたしが入ろうとしていたのは、かの有名なビクトリアシークレットである。あの、いつ出番があるのかわからない派手な色のブラジャーや、非常に不安感を煽る面積の少ないパンティなどを売っている下着屋さんのことだ。

ブラックフライデーはアメリカのサンクスギビングデーに基づくイベントだが、カナダでもブラックフライデーは催されており(カナダのサンクスギビングデーは10月だ)、街は買い物をする人々でごった返していた。わたしは薄着したら透けそうな黒や赤や紫の下着とか安心感の薄い下着を好き好むタイプではないけれど、まぁブラックフライデーだし、と言い訳して店舗に足を運んだ。しかし店舗に入ることは叶わなかった。

なぜなら店舗に入ろうとしたまさにその瞬間、お店の入り口の目の前で、おじいさんに話しかけられたからである。彼は言った。「今日はすごく人が多いね」と。「なぜだか知っているかい?」と彼は続けた。

わたしは「ブラックフライデーだからね」と答える。何か買ったか、と尋ねられたのでわたしは首を横に振る。なぜならあなたに話しかけられていて、目的の下着屋さんに入れてないからよ、とは言わなかった。帽子を被り、上質そうなコートに身を包んだ人の良さそうな顔のおじいさんは、わたしにどこから来たのかと聞き、日本だと答えると驚くほど流暢な日本語を(たぶんわたしの英語と同じくらいのレベルだ)(おじいさんが日本語を話すことに驚いたというだけで、わたしの英語が流暢というわけではない)話した。

ビクトリアシークレットの前で立ち話をして10分は過ぎた。道の真中で立ち止まるわたしたちに目もくれず、買い物に命をかける人々が足早に通り過ぎていく。わたしはこの話をいつ引き上げようかと考えていた。おじいさんは言う。「良かったらカフェにでも行かないかい?美術館のカフェのホットチョコレートが美味しいんだよ」。

いつもなら時間がないから、友達を待っているから、と断るところである。しかしわたしには時間があった。4時過ぎに学校に戻らなければならなかったし、時刻はまだ2時半だった。1時間くらいならカフェでホットチョコレートを飲んでもいいかな、と思った。学校に戻るまでの時間をビクトリアシークレットで潰せるとは思えなかったからだ。

美術館のカフェは初めて行ったけれど雰囲気の良いところで、おじいさんはホットチョコレートを奢ってくれて、ブラウニーをはんぶんこした。ブラウニーをはんぶんこって、もはや恋人ではないか。それかもしくは本当の孫と娘では?と思ったけれどブラウニーは美味しかった。ホットチョコレートはミルクじゃないかと疑うほどチョコレートの味が薄かった。

彼はよく日本語を話し、聞くところによると彼は元大学の教授らしい(帰ってからググったが、どうやら本当のようだ)。彼は日本の昔話を聞きたがったがわたしは何も思いつかなかった。彼が知っていたのは、娘を陥れるために鬼の仮面を被った母親の話だった(なんだったんだろうあの昔話は)。わたしは研究のことを話して、神経化学とマウスの実験の話をした。ちなみにわたしが学校でプレゼンをする機会があることを話すと、彼は教壇に立っていた経験からアドバイスをくれた。ゆっくり話すこと、深呼吸すること、話題についてよく知っておくこと、自分の声を操ること、の4つだ。これ以外に学んだことは、定年退職した大学の教授は、街で下着屋に入ろうとする24歳の女をカフェに誘いホットチョコレートを奢るということだ。

 

1時間ほど話して、4時を過ぎたのでわたしは学校に戻ることにした。彼にメールアドレスを聞かれたので、ナプキンに書いて渡した。家に帰るとメールが来ていた。

 

Kyo wa ohanashi dekite totemo tanoshikatta desu! Arigato gozaimasu.
 
Nezumi wa chu chu shimashita!
 
Musume o obiyakasu tame ni okasan wa akuma no kamen o kabumashita. Ijiwaru na okasan wa imashita! 

 

 わたしはこのメールに対して、彼の日本語を褒めようとして誤ってYour English is pretty good!と送信する失態を犯した。

次のメールではわたしがGmailのアイコンにしている写真を褒める文章と、暇があればまたお茶しようと書かれていたけれど、返事はしていない。

 

ブラックフライデーの翌日もセールをしているところが多いのだが、ビクトリアシークレットはしていなかった。そんなわけでわたしはブラックフライデーの恩恵を受け損ねたのであった。しかしもうすぐボクシングデーがやってくる。ボクシングデーとはクリスマスの翌日のことで、この日も街中で盛大なセールが催されるのである。全国民がこの日のために今は買い物を控えていると言っても過言ではない。

というわけでわたしも今度こそは、その恩恵を受けられるはずである。店舗に踏み入れる直前に見知らぬおじいさんに話しかけられなければ、の話だが。